内科
睡眠時無呼吸症候群は「いびき」だけではありません💤 ~高血圧・糖尿病・心筋梗塞・脳卒中との深い関係~
「いびきが大きいだけだから大丈夫」
そう思っていませんか?
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、寝ている間に呼吸が何度も止まったり浅くなったりする病気です。単なる「いびき」や「日中の眠気」の問題ではなく、高血圧や糖尿病、心臓病、脳卒中など、全身のさまざまな病気と深く関わっていることが分かっています。実は、夜中に何度もトイレへ起きることや、朝起きても疲れが取れないこと、日中の強い眠気や集中力の低下も、睡眠時無呼吸症候群が原因となっていることがあります。
今回は、睡眠時無呼吸症候群が体にどのような影響を及ぼすのか、そして放置するとどのような病気につながる可能性があるのかを、できるだけわかりやすくご紹介します。
◆ 睡眠時無呼吸症候群とは❓
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)は、睡眠中に何度も呼吸が止まったり浅くなったりする病気です。
最も多い「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)」では、眠ることで舌の付け根やのどの軟らかい組織が落ち込み、空気の通り道(気道)が狭くなることで呼吸が止まります。
呼吸が止まるたびに体は酸素不足となり、脳は呼吸を再開させるために何度も覚醒します。
その結果、本人は気付かないうちに睡眠が何度も中断され、十分に眠ったつもりでも疲れが取れず、日中の眠気や集中力低下につながります。
なお、閉塞性睡眠時無呼吸症候群では、鼻づまり、アレルギー性鼻炎、鼻中隔弯曲症、扁桃肥大、舌が大きいこと、顎の形など、さまざまな原因が関係しています。また、肥満の方だけでなく、痩せている方でも顎の形や気道の構造が原因で発症することがあります。
睡眠時無呼吸症候群は、鼻やのどの形態、肥満などによる気道の狭さだけでなく、高血圧や糖尿病、心血管疾患など全身の病気とも深く関わる、原因や影響が複雑な疾患です。
そのため、耳鼻咽喉科専門医による気道の評価に加え、内科・睡眠医療の視点から全身状態も含めて診療を行うことが、より適切な治療につながります。
当院では、耳鼻咽喉科専門医と日本睡眠学会専門医が連携し、一人ひとりの状態に合わせた睡眠時無呼吸症候群の診療を行っています。
◆ 睡眠時無呼吸で体に起こること
① 血液中の酸素が何度も低下する
無呼吸になると体に取り込まれる酸素が減り、血液中の酸素濃度が低下します(低酸素状態)。
この状態が一晩中何十回、何百回と繰り返されることで、血管や全身の細胞に慢性的なストレスがかかります。
② 自律神経が常に緊張状態になる
本来、睡眠中は体を休ませる「副交感神経」が優位になります。
しかし睡眠時無呼吸では、呼吸が止まるたびに体が危険を察知し、「交感神経」が繰り返し活性化されます。
その結果、
- ● 血圧が上昇する
- ● 心拍数が増える
- ● 不整脈が起こりやすくなる
などの変化が起こり、重症例では日中まで交感神経の緊張が続くことがあります。
③ 心臓に大きな負担がかかる
気道が塞がっている状態で呼吸しようとするため、胸の中には強い陰圧が生じます。
この圧力変化は心臓に余計な負担をかけ、長期間続くことで心臓の働きにも悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 血管の老化を進める「炎症」と「酸化ストレス」
低酸素状態と、その後に酸素が戻る状態が繰り返されることで、体内では炎症や酸化ストレスが起こりやすくなります。これにより血管の内側(血管内皮)が傷つき、動脈硬化が進みやすくなると考えられています。
⑤ 高血圧を起こしやすくなる
睡眠時無呼吸では、血圧を上げるホルモン(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系)が活性化するとされています。
そのため、
- ● 夜間高血圧
- ● 早朝高血圧
- ● 薬を飲んでも血圧が下がりにくい高血圧(治療抵抗性高血圧)
との関連も指摘されています。
◆ 睡眠時無呼吸症候群と関係する病気
<高血圧>
睡眠時無呼吸症候群は、二次性高血圧の代表的な原因の一つです。
特に、
- ● 朝の血圧が高い
- ● 夜間も血圧が下がらない
- ● 薬を飲んでも血圧が下がりにくい
という方では、睡眠時無呼吸症候群が隠れていることがあります。
<糖尿病>
睡眠時無呼吸症候群では、低酸素状態や交感神経の緊張、慢性的な炎症などの影響により、インスリンが効きにくくなる(インスリン抵抗性)ことが知られています。
そのため、2型糖尿病の発症や血糖コントロールの悪化に関与すると考えられています。
また、糖尿病のある方では睡眠時無呼吸症候群を合併している割合も高く、お互いに影響し合う病気として注目されています。
<心房細動などの不整脈>
重症の睡眠時無呼吸では、不整脈のリスクが高くなることが報告されています。
特に心房細動は関連が強く、
- ● 夜間の低酸素
- ● 自律神経の乱れ
- ● 心臓への物理的負荷
などが影響していると考えられています。
また、心房細動は脳梗塞の原因となる代表的な不整脈です。心房細動に対してカテーテルアブレーションなどの治療を受けた方でも、睡眠時無呼吸症候群を適切に治療することで、再発リスクが低下する可能性が報告されています。
<心不全>
睡眠時無呼吸は心臓に負担をかけ続けるため、心不全の悪化に関与すると考えられています。また、心不全の患者さんでは中枢性睡眠時無呼吸(CSA)を合併することも少なくありません。
<狭心症・心筋梗塞>
睡眠時無呼吸が重いほど、冠動脈の動脈硬化が強いことが報告されています。低酸素や血圧変動、炎症などが積み重なることで、心臓の血管に負担がかかるためです。
<脳卒中>
睡眠時無呼吸は、
- ● 高血圧
- ● 心房細動
- ● 動脈硬化
などを介して、脳卒中リスクにも関係すると考えられています。
◆ 夜間頻尿との関係
「年齢のせいだから仕方ない」と思われがちな夜間頻尿ですが、睡眠時無呼吸症候群が原因となっていることがあります。
睡眠時無呼吸では、呼吸が止まるたびに胸の中の圧力が大きく変化し、心臓に負担がかかります。すると、尿を増やすホルモン(心房性ナトリウム利尿ペプチド:ANP)が分泌されやすくなり、夜間に何度もトイレへ起きる原因となります。また、「トイレに行きたくて目が覚めた」のではなく、「無呼吸で目が覚めたついでにトイレへ行っている」というケースも少なくありません。
睡眠時無呼吸症候群を適切に治療することで、夜間頻尿が改善する方も多くいらっしゃいます。
◆ 認知機能の低下・認知症との関係
睡眠時無呼吸症候群では、睡眠が何度も中断されることに加え、夜間の低酸素状態が繰り返されます。その結果、集中力や記憶力、判断力などの認知機能に影響を及ぼす可能性があることが報告されています。
近年では、認知症との関連についても多くの研究が進められています。睡眠時無呼吸症候群がすべての認知症の原因になるわけではありませんが、適切な診断と治療は、脳の健康を守るうえでも大切と考えられています。
◆ 交通事故のリスク
睡眠時無呼吸症候群では、睡眠の質が低下することで日中の強い眠気や集中力の低下を招きます。そのため、自動車運転中の居眠り運転や交通事故のリスクが高くなることが知られています。職業ドライバーや長距離運転をされる方では、早めの診断と治療が特に重要です。
適切な治療によって眠気が改善し、交通事故のリスク低下につながることも期待されています。
◆ 「眠気」だけではありません
睡眠時無呼吸症候群は、「いびき」や「日中の眠気」だけの病気ではありません。
長期間放置すると、
- ● 高血圧
- ● 糖尿病
- ● 心房細動などの不整脈
- ● 心不全
- ● 狭心症・心筋梗塞
- ● 脳卒中
- ● 認知機能の低下
など、全身のさまざまな病気の発症や悪化に関わる可能性があります。
一方で、CPAPなどによる適切な治療によって、
- ● 睡眠の質の改善
- ● 日中の眠気の改善
- ● 血圧の改善
- ● 血糖コントロールの改善
- ● 夜間頻尿の改善
- ● 心血管リスクの低減
などが期待できます。
◆ このような症状はありませんか❓
- ✅ 大きないびきをかく
- ✅ 寝ていると呼吸が止まると言われたことがある
- ✅ 朝起きても疲れが取れない
- ✅ 日中に強い眠気がある
- ✅ 朝起きると頭痛がする
- ✅ 夜中に何度もトイレに起きる
- ✅ 熟睡した感じがしない
- ✅ 集中力が続かない
- ✅ 高血圧や糖尿病と言われている
- ✅ 心房細動などの不整脈がある
一つでも当てはまる方は、睡眠時無呼吸症候群が隠れている可能性があります。
◆ 当院では睡眠時無呼吸症候群の検査・治療を行っています
当院では、日本睡眠学会専門医と日本睡眠学会認定検査技師が連携し、睡眠時無呼吸症候群の検査・診断からCPAP治療まで一貫して行っています。
また、耳鼻咽喉科専門医の立場から鼻やのどの状態を評価するとともに、内科的な合併症や全身状態も含めて総合的な診療を行っています。「ただのいびきだから」と思っていても、その背景に睡眠時無呼吸症候群が隠れていることは少なくありません。ご家族から「いびきが大きい」「呼吸が止まっている」と言われたことがある方や、
- ● 朝起きても疲れが取れない
- ● 日中に強い眠気がある
- ● 夜中に何度もトイレに起きる
- ● 高血圧や糖尿病、不整脈がある
このような症状がある方は、一度検査を受けてみることをおすすめします。
睡眠時無呼吸症候群は、早期に発見し適切な治療を行うことで、睡眠の質だけでなく、将来の健康を守ることにもつながる可能性があります。「いびきくらい」と放置せず、気になる症状がありましたら、お気軽に当院までご相談ください。🏥
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